福岡さんのこの連載の前回の記事では、もはやアルバムに居場所はない、これからはプレイリストだ、というようなことが書かれていて、私は少なからずむっとしたのだった。
というのも、アルバムという単位で聴いてくれ、という代物を制作中で、その出来上がり間近なところだからですよ。
それだけじゃなく、大量に音楽を聴いてきて、軽くジャンキーだと言っていいぐらいには音楽好きな私ですが、その中にはアルバムという単位で聴くべき作品というのはあったし、それでこそ素晴らしいというものもいろいろあったわけで、それが私の血となり肉となり……って、おまえは大袈裟なんだよ、とお思いでしょうが、そこそこ本気です。
アルバムで聴くべきものは確かにあった……だけではなく、これからだってそういうものを作る人もいる。例えば、私。
ということを申しておきたい。
それはそれとして、今回の「熟読」ならぬ「熟聴」という話。
これね、ありますね。私が「熟聴」で衝撃を受けたのはKing Crimsonの『Red』でした。中2の時。
風邪かなんかで寝込んでいて、弟にキング・クリムゾンの顔がでっかくのってるアルバムを買ってきてね、と頼んだところ、届いたのが『Red』だったんですよ。クリムゾンで顔のアルバムって言えば宮殿だろ、と思う人が多いでしょう。私もそう思った。しかし、中1の弟に対して説明の足りなかった私に責任があったのは明らか。
で、『Red』を聴いたんです。なんというか、エネルギーみたいなのは感じるけど、いまいち乗れないってなことを思いつつ、繰り返し聴いていた。むしろつまらない場面も多いよななどと思いながら、繰り返し聴いていた。
何周目ですかね、突然、脳天にびりびり電気が走って……って、おまえは大袈裟なんだよ、とお思いでしょうが、そこそこ本気です。
その瞬間からあとは気持ちよくて何度も聴かずにはいられなくなったのでしたよ。
『Red』、今でも一番好きなアルバムのひとつです。