自分の作品を宣伝するのは気が引ける。私は人生において名曲しか書いたことがないと豪語するような図々しい人間だけれども、宣伝となるとね、ちょっとね。
これに関してはロケット師匠やドラムの大先生とも話題になったことがあったな。いろいろとたるんでへらへらとエンジョイ方向で生きているというところだけじゃなくて、こういう気質というのかなんというのか、私たち、ぐいぐいいけないところが似ていますですなあ……というような、なんかそういう話になったことがあったのだった。「日本一のばか息子、この指止まれ」などという戯けた歌詞を書いていた時代だろうか。何十年か昔のこと。あれは何ていう曲だったかなあ。
実のところ、自分のことだけじゃなく、身内の宣伝もちょっと苦手ではあります。駒沢の Rocket◎Socket は気の利いたダーツ・バーである上に、ラーメンが日本で二番目ぐらいにうまいらしい、なんてなことを書くのも何というか、ちょい照れくさいような。自分のことじゃないから、じゃんじゃん宣伝すりゃいいじゃんと思いつつ。
そんなこんなの言い訳がましい前置きに続きまして、『波紋と螺旋とフィボナッチ』『いきもののカタチ』という何となく連作みたいな本のことを少し。
この近藤滋という研究者、相当にクレバーで、しかも、洒落もわかる気の利いた人物なんですよ。生物の模様の研究なんてなものをやっていて、テレビで取り上げられたりもしているので、見かけたことがある人もいるかもしれませんな。画面の中でもフレンドリーで楽しげに説明していたね。うん。
そんな彼ですから、科学ネタを学術書としてではなくそれなりにわかりやすく書いてくれていて、読み物として面白くなるように頑張っています。実際、なかなかおもろいんだけれども、おまえさん、完全に話がわかったんかえ、と問われると、まあ、それなりに堅苦しいところもあるしさ、そこまでみっちり読み込んだわけでもなくて、へええ、そうなんだ、興味深いですなあ、なんてなレベルの距離感で読んだということは白状しておこう。
でも、ですね、科学、なかでも生物のありように興味があるような若者、高校生や学部の若手の人には、本当にいい本だと思うよ。そして、近藤滋先生様のゼミに進んでみたらおもろいんじゃないかな、ということは強く言いたい。そんな気になる本。
一番けつのところに、なぜそれぞれのテーマを研究する気になったのか、みたいな呟きのようなものが記されていて、そのページだけでもこれから研究者になるような若い人には読んでもらいたいな、なんてね。